アメリカでは無痛分娩がメジャーですが、ずっと日本にいた私は麻酔の事故などの報道も目にしていたので不安でした。アメリカで無痛分娩をするに当たり、出産前は不安でいろんな人にきいたり調べたりしました。
アメリカと言っても病院によっても加入している保険によっても大きな差があると思いますし、出産は十人十色。
本記事では、私が利用した病院での様子と体験をお話したいと思います。
- もしもう一回出産するとしたら無痛分娩を選ぶか?
- どのタイミングで病院に電話する?何を伝える?
- 無痛分娩がいいかどうかはいつ伝える?
- どのタイミングで麻酔をするか
- 無痛なの?
- 値段は?
- 以下は自分の体験談です
- 電話(15時頃)
- 受付
- 検査室に行きます(16時頃)
- その辺歩いてきて
- トイレにこもる
- 破水(17時半頃)
- 腕に留置針を入れて個室へ(18時頃)
- 麻酔科医を待つこと1時間(19時頃)
- チェック事項が長く感じる
- ベテラン麻酔科医の指導のもと硬膜外麻酔
- 20分くらいで麻酔が効いて楽になる
- 緊急事態発生?
- 寝る
- 麻酔の追加禁止
- 誕生(翌日8時半頃)
- 後処置
- 割礼(circumcision)はする?
- 入院は2晩
- 一番痛かったこと
- 無痛分娩一番のメリット?
もしもう一回出産するとしたら無痛分娩を選ぶか?
答えはYESです。ただし限定条件つきで…今回はアメリカで10本指に入るくらい人気の大学病院での出産だったので、スタッフの数も十分にいて医療体制にも安心していました。計画分娩にする必要もなく、土日も深夜も対応してくれます。
私は大学勤務なので、その大学病院も大学の保険でカバーされます。職場から歩いていける距離にあるのでとても便利でした。なんとも贅沢な環境で、そういう環境だったらまた無痛分娩を選びたいです。
どのタイミングで病院に電話する?何を伝える?
「1分以上続く規則的な痛みの間隔が3~4分に1回になり、その状態が1時間以上続いたら」or「破水が起きたら」or「タイレノール(アセトアミノフェン)に反応しないひどい頭痛がする」場合に電話をするよう指導されます。妊娠後期は病院の近くにいないといけないので、車で30分以内の距離を想定しています。妊娠35週以降に緊急搬送で他の病院に行くことになった場合、保険が全くカバーされないので破産します(アメリカの医療費は半端ないので)。検診のときに、ドクターから「電話の際は○日前に○%くらい降りてきていた」と伝えてくださいと言われました。
無痛分娩がいいかどうかはいつ伝える?
陣痛がきて病院に行ったあと、無痛分娩が可能なタイミングになる少し前に無痛分娩を希望するかどうかを確認されます。
私は無痛分娩を強く希望していたので、何か聞かれる度に「いつ麻酔をするのか?なるべく早くやりたい!」と伝えていました。おそらくミスコミュニケーションを減らすためですが、学生とテクニシャンとナースとドクターと…4人くらいに全く同じことを質問されたので4回全く同じことを答えました。こちらでは何か希望がある場合は強く主張することが大事です。混雑具合によっては、痛みを我慢していると耐性があると思われて後回しにされる可能性があります。私は他の人の同じ病院での経験談をきいていたので、少し大げさにアピールしておきました。
どのタイミングで麻酔をするか
子宮口が5~6cm開いた頃に麻酔をするのが理想だそうですが、医師のシフトや混雑具合でかなり前後するようです。破水が先だった場合は早い段階で個室に入れるので、早めに麻酔してもらえることが多いようです。友人は医師のシフトチェンジのタイミングとかぶってしまい、遅めになってしまったようです。他の友人も理由は謎ですが、出産の直前のいきむのを我慢する段階までずっと待たされたようです。
無痛なの?
個人差があります。硬膜外麻酔の針を入れるときの痛みは全くありませんでした。陣痛の痛みがあったせいかもしれませんが…医者の腕にも左右されるらしいです。
麻酔が効いたあとは眠れるくらい、ほぼ痛みはありませんでした。
値段は?
保険で全額カバーされるので金額に差はありませんでした。大学の保険は妊婦健診~出産後まで、遺伝子検査をしても帝王切開になっても子どもがNICUに行くことになっても、何をしようがいくらかかろうが自分で払う金額(copay)は300ドル(3万円ちょっと)です。
以下は自分の体験談です
電話(15時頃)
当日は朝からソファーでごろごろしながら何となくお腹が痛くてトイレに行ってはスッキリせずに戻ってくるというのを繰り返していました。どうやらこれ、よくある症状らしいです。
なんとなく痛みの間隔時間を記録してみると、4~15分間隔で持続時間は1分未満でした。私はアプリ【ninaruの陣痛・胎動カウンター】を使用し、陣痛の間隔を調べました。前駆陣痛を本陣痛と勘違いする人が多いという話をきいていたのもあり、最初は本陣痛だと思っていませんでした…
まだ一定ではありませんでしたが、少量の出血があった(2日前の検診から少量出血が続いていたが色が変わった。たぶんおしるし。)のと、胎動をあまり感じなくなった(おそらく下に降りてきたから)ことが不安だったので電話しました。折り返し電話があってもう一度現状を伝えると、病院に来てくださいとのことでした。おそらく出血のことと胎動のことを伝えなかったらまた電話してね、と言われていたと思います。
受付
休日だったので緊急搬送口から入り、受付をしました。その間も立っているのがつらくてしゃがみこんでいたら「車椅子いる?」と訊いてくれました。お言葉に甘えて…受付のおばちゃんが車椅子で産婦人科の受付まで連れて行ってくれました。
検査室に行きます(16時頃)
モニターをつける前に学生が来て聞き取りをします。この段階で早く無痛分娩がしたい!と伝えました。テクニシャンの人が来てモニターをつけながらまた同じ質問をします。超音波で赤ちゃんの頭の向きを確認し、子宮口の開き具合等をチェックします。その時はまだ2−3cmでした。
その辺歩いてきて
家に帰されるかと思いましたが、病院の中を歩いて2時間後にまた来てと言われました。おそらく病院が混雑していなかったのでしょう。そのときに使い捨てのパンツと分厚いパッドを渡されました。
トイレにこもる
歩いてきてと言われても痛くて歩く気になれません。すぐ近くのトイレまで歩くのがやっとでした。まだトイレに行きたい感覚が続いていたので、ずっとトイレに引きこもって踏ん張っていました…
破水(17時半頃)
トイレを何とか済ませて廊下の手すりにしがみついていたらすごい勢いで生ぬるい水が出てきました。とてもわかりやすい破水です。そんなに歩かず近くにいて良かった…
そのときは自分のワンピースを着ていたので、濡れていないかな?とどうでもいいことが不安になりましたが、パッドが全部吸収してくれました!
「破水したからさっきの部屋に戻らなきゃ」と必死になって歩いていたら、扉から出てきたおじさんにぶつかってそのまま支えられました。おじさんに連れられて部屋へ…。後でわかったのですが、その方はベテランの麻酔科医でした。
腕に留置針を入れて個室へ(18時頃)
分娩を終えるまでは同じ部屋で過ごします(入院の部屋まで一緒のところもありますが、ここは分娩を終えたら違う部屋に移動しなければなりません)。ベッドのまま移動してもらいました。
麻酔科医を待つこと1時間(19時頃)
この時点で子宮口は4cm程度でしたが、すでに私の限界は近づいています。寒気と痛みによる吐き気がしました。すぐにでも麻酔をしてほしかったのですが、「今他の人やってるから。終わったらすぐ来るから待っててね。ごめんねー」とモニタリング担当の人に言われました。いつまで待てばいいんだ…(こっちの人のすぐはすぐじゃない)。無痛分娩じゃないとこれがずっと続くのかと思いぞっとしました。とても長く感じましたが1時間程度で麻酔科医がきてくれました(あ、さっきのおじさん笑)。
チェック事項が長く感じる
麻酔をする前にアレルギーはないか、薬物はやっていないか等の形式的な聞き取りがあります。強制的に通訳が呼ばれるって日本人のママたちからきいていたのですが、幸いそれはなくスムーズに済みました。「全部NOだからいいから早くやってくれ」というのが伝わったのか、めちゃめちゃ早口で説明してくれました。
ベテラン麻酔科医の指導のもと硬膜外麻酔
痛みが引くタイミングを見計らって硬膜外麻酔のための姿勢をとります。お腹が邪魔だし痛いのに、これでもかってくらい体を丸めます。早くやってもらいたいので、ここは全力で我慢します。
20分くらいで麻酔が効いて楽になる
麻酔が効いてからはびっくりするくらい痛みがなくなりました。さっきまでのことが嘘みたいに家族と談笑したり友達にメッセージを送ったり電話したりしていました。担当の人がたまにからだの向きを変えに来てくれるくらいで、あとは完全にリラックスモード。夜になりウトウトしてきました。
緊急事態発生?
麻酔を導入して1時間も経ってなかったと思います。担当の人が慌ただしく私のからだの向きを変えるなぁと思っていたら、急にスタッフが8人くらいわらわらと来て忙しそうに色々とやり始めました。酸素マスクを当てられ、何本か注射を打たれました。母子ともに血圧が低くなっていたらしいです。自分は何も異常を感じていなかったし、されるがままでしたが、見ていた家族はひやひやしたそうです。自分で異常を感じない早い段階できちんと対応してくれたので良かったですが、気がつくのが遅れて放っておかれてたらって考えるとこわいです。でも休日の夜にも関わらず対応してくれる人がたくさんいるなんて、さすが大きな大学病院です。
寝る
その後は特に何もなく、寝ていました。手元に麻酔追加のボタンがあり、痛みで起きたらひたすら押す、の繰り返しです。20分に1回反応するようにセットされているので押しすぎても大丈夫です。夫はソファーで爆睡、母は眠れなかったようで本を読んでいました。
麻酔の追加禁止
子宮口をチェックしたところ、出産のときが近づいてきたらしく、「少しくらい痛みがあった方が産むのは楽だからもう麻酔は追加しないでね」と言われました。その後しばらく音沙汰がなく、だんだん痛みが強くなるので「産むならはやくして!まだならボタン押すけどいい?」ってナースコールで何度もきくと「今見にいくからちょっと待って」と言われ絶望しました。(出た、ちょっとじゃないやつ!!)
誕生(翌日8時半頃)
ようやく助産師さんが来て準備を始めました。いきみたい感覚はある?と訊かれましたが、全くわからなかったので多分ありません。そのときの麻酔の効き具合は、陣痛の間隔はわかる程度になっていました。言われた通りにいきむとすぐに頭が出てきました。初産にしては上手だったらしく慌ててドクターが呼ばれます。ドクターが登場し和やかモードの中(私は多少余裕はあるがさっさと終わらせたい)、数回いきんでぼっちゃんが出てきました。夫がへその緒を切りました。
後処置
会陰切開はしないので、裂けたところを縫ってもらいます。4段階のうちレベル2くらいの裂傷で、あまりひどくはありませんでした。会陰マッサージとかやってみたけど効果はあったのかな…?処置中は全く痛みを感じませんでした。
その間に助産師さんがぼっちゃんを綺麗に(?)ふいたり色々やったのちに胸元に持ってきてくれました。ずっと泣いてる赤ちゃんに戸惑っていたし疲れていたので「愛しの我が子よ♡」みたいな感じではありませんでしたが、無事産まれたことの安心感と達成感はありました。
割礼(circumcision)はする?
男の子の場合は割礼をするかどうかを何度も訊かれるので、この英語を覚えておくのと答えを用意しておく必要があります。この病院では、割礼を希望する場合は出産後1日以内に処置がされます。うちは希望しなかったのでそのままです。
アメリカでは割礼をする人が多いと言われていますが、最近は衛生面や病気の予防等のメリットが疑問視されてきており、割合は減っているそうです。これらの理由から、そのとき担当したドクターは強くは薦めていませんでした。
アメリカに来ている日本人はしている人が多かったです。せっかくアメリカにいるというのと、学校でいじめられないよう皆と同じになるようにという理由でする人もいるようです。
入院は2晩
入院も個室で、赤ちゃん同室でした。助産師さんが頻繁にきて、私とぼっちゃんの身体チェックをします。痛み止めと便秘薬も出してくれました。また授乳専門のナースや助産師さんが授乳の指導をしてくれます。私はうまく授乳ができなかったので退院後にも相談に通いました。
ぼっちゃんは午前中に産まれたので病院の滞在時間は長めでした(日が変わる直前に出産すると一番短い)。普通分娩の場合は3日目の昼に、帝王切開の場合は4日目の昼に退院です。
食事はメニューの中から好きなものを注文して持ってきてもらうスタイルでした(1日何回でも無料)。ですが日本のように豪華なものではなく味も普通で、すぐ飽きたので早く退院したかったです。夫に買ってきてもらった寿司と電子レンジで作ったうどんが美味しかったです!
一番痛かったこと
胎盤等が残らないようにとお腹の上から思いっきり押されるのですが、これが何よりも一番痛かったです。なんでこれだけそんな原始的な方法なの??次の日もやられて痛かったです…幸い子宮内には何も残らず、何も問題なく退院しました。
無痛分娩一番のメリット?
術後の体力の回復は本当に早かったです。筋肉痛になることもありませんでした。興奮状態が続いたせいもあると思いますがが、麻酔が切れて足の感覚が戻ったら普通に歩き回れました。会陰の痛みは薬で抑えられているので、座らなければ大丈夫でした。
何事もなく無事に無痛分娩による出産を終えられましたが、途中自分でも気がつかないトラブルがあったことを考えるとやはりこわいです。それ以外はとても良かったですが、気軽に人に薦められるものではありません。スタッフが十分にいて信用できる病院であれば、また無痛分娩を利用したいです。ちなみに保育園(デイケア)が高すぎて経済的余裕がなくなるので、今のところ予定はありません!デイケアについての記事はこちら↓↓↓