子育て向いてないぼっちゃんママの研究記録

アメリカで共働き。東大卒、元大学教員の研究者。子育てには向いていませんが、楽しむ努力をしています。

目指せホワイトなラボ!転職時のチェックリストまとめ

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本記事では、ホワイトな職場に転職したいという人のために、転職先を探す時に何に気をつけたら良いのか・どのような質問をしたら良いのかをリストアップしました。研究室(ラボ)特異的かつアメリカ特異的な項目もありますが、自分の環境に当てはめて参考にしてみてください。

来月から新しいラボに移ることに決まったので備忘録として残そうと思います。

転職活動開始

しばらく前に次はホワイトな研究室に行きたいという記事を書きました。

www.botchanm0m.com

大統領選次第では、ビザの都合上外国人はアメリカに居づらくなる可能性があったので、しばらくはあまり積極的に転職活動をしていませんでした。

大統領選も終わり、自分のプロジェクトにも区切りがつき、ボスの理不尽な行動も増えてきたので本腰を入れて転職活動を始めました。

 

研究業界におけるホワイトな職場とは

研究職におけるホワイトの定義は難しいところがありますが、私が考えるホワイトな職場とは

  • 研究費が十分にある
    大きなグラントをとっていてお金に余裕がある。人件費もグラントから出るので、お金がないということはいつクビになってもおかしくないということです。ボスの方針にもよるのですが、実験をするにも時間をお金で買ってくれます。
  • 人手不足でない
    秘書やテクニシャンがいれば雑用は圧倒的に少ないです。研究以外のオーダーや共通試薬・備品などの管理に割かれる時間が減ります。また自分以外にラボメンバーも十分いればグラント申請に必要な実験など自分のプロジェクト以外の実験の負担が減ります(メンバーが多すぎるとボスが把握しきれずうまく回っていないというラボもあるので注意が必要ですが…)。職種にもよると思いますが、自分がいないと回らないという状況は避けたいです。
  • ボスの人柄とラボの雰囲気・ラボメンバーどうしの仲が良い
    快適さはかなり重要です。研究に集中できます。
  • 仕事内容以外でストレスを感じることがない
    無駄に考えなければならないことが増え、生産性が落ちます。
  • 生産性がある
    質の良い論文が定期的に出ていることが研究業界では重要です。論文がなければ転職も難しくなります。
  • フレキシブルである
    子どもの都合などで日中来られない時があっても理解がある。フレキシブルなのは研究職の利点のひとつだと思っています。
  • やりたいことがマッチしている
    多くの研究者は自分のやりたいことがはっきりと決まっています。ぴったり一致するのはなかなか難しいと思いますが、自分のやりたいことができるかどうかの確認は重要だと思います。

といったところでしょうか。人によっても職種によっても求めることは異なると思います。

 

今まであまり環境を気にしてこなかった

医療系の大学に入学してからずっとブラックな環境にいたため体が慣れてしまっていて、これまであまり環境や自分のストレスレベルを重要視してきませんでした。アメリカに来ていろんな国や考えの人に接するようになり、子どももできて、自分の考えが少しずつ変わり、もっと自分や家族のことを大切にしようと思うようになりました

今までの私は、研究職で居心地の良い所は生産性がない所だとも思っていました。だからブラックなのは仕方ないかと…残念ながら日本で私の分野だと生産性を伴うホワイトなラボはかなり少ないです。正直私は聞いたことがありません…

でもアメリカに来てから違うラボの友達に話を聞いていると、むしろ生産性のあるラボはホワイトなことが多いんです。最初は信じられませんでした。本来あるべき姿なのでしょうが…

 

質問リストとその意図

ホワイトな職場に行きたいと思っていても、具体的にどういう所に行きたいのかというビジョンがないと適切には選べません。それをもとに質問リストを作成していきます。

ボス (PI: Principal Investigator) にきくこと

プロジェクトについて

たいていは何も聞かなくともボスがプレゼンしてくれます。論文は事前にチェックすると思いますが、論文だけではなく現在進行中のプロジェクトもきくことができるので、自分がやるであろうプロジェクトに興味があるのかどうか判断できます。大きいラボだとプロジェクトがいくつかのグループにわかれていることがあり、どれに興味があるのか聞かれることもあります。

グラント(研究費)の状況

しばらくは雇ってもらえそうかどうかの参考になります(もちろん今後の働き次第なのですが)。基本的にポスドクは数年契約で、私がいる大学は毎年契約更新です。グラントがなくなるといくら人をキープしたくても追い出さざるを得ないのがこの業界のシビアなところです。ちなみにNIHのページでボスの名前を入力すればNIHのグラント状況を把握できます(https://projectreporter.nih.gov/)。

卒業生の進路先

アカデミアに残りたい人、企業に行きたい人それぞれ参考になります。ある程度のコネクションはどの業界でも大事です。

どんな人とコラボレーションしているか

論文やグラントを見ればある程度はわかります。分野によっては次の就職先などでコラボレーション相手が多いと有利になることもあります。研究を続けるなら人脈があるに越したことはありません。

カンファレンスへの参加に積極的か

特に国際学会は参加するのにお金がかかるので、それをサポートしてくれるのかどうか。

グラントを書くトレーニングには積極的か

ボスになりたい人にとっては、グラントを書けるようになるためにある程度トレーニングが必要です。もしそのサポートをしてくれるならとても良いです。ボスからのサポートはなくても他の人にも見てもらうことは可能なので、出すことを推奨しているかどうかだけでも確認したら良いと思います(中には研究に集中してほしいという考えの人もいます。一理ありますが、あまりポスドクの将来を考えてくれているとは思えません…)。

いつ来て欲しいか

自分のプランも伝えつつ相手にとっての理想の移動時期を確認します。時期によっては受け入れられないという場合もあるのですり合わせが必要かもしれません。

ラボメンバーに話をきいても良いか

ボスに許可をとらなくとも、ラボメンバーに連絡ができる場合はわざわざ聞く必要はありません。ですがこの質問をして渋るPIは要注意です。むしろラボメンバーとは話したか?とボスから聞かれるくらいの所が良いです。

ラボには長くいてほしいか

状況により様々なので難しいですが、ボスの意向を聞いておいても良いかもしれません。短期間のプロジェクトを任せてその後は他で探して欲しいという場合もあるかもしれません。自分のプランと照らし合わせて考えたいところです。

ラボ以外の実験をしても良いか

前のラボでの実験は終えたつもりですが、論文を出すと追加で実験が必要な場合が多々あります。その時に実験をしても良いかどうか聞いてみました。別にできなくても移動するつもりだったので良いのですが、先に聞いておきました(所属部署のポリシーに反さないのであれば、是非やって論文を出した方が良いと言ってもらえました)。研究分野によっては個人的に共同研究しているという人もいるかもしれません。他の職種でいう副業的な感じになるのでしょうか?確認が必要だと思います。

給料は?

日本では公に給料を伝えられることが少ないかもしれませんが、アメリカだと先に伝えられることがほとんどです。私は学内移動だったので交渉は難しかったのですが、企業だと交渉するのが当たり前のようです。(日本では就職前に賃貸を契約する際に給料をしっかり提示できず困りました…)。その給料に満足できるかどうか考えます。お金は大事です。

ビザの更新はサポートできるか

私の場合は数年以内にH1Bビザに更新する必要があります。ビザの更新・グリーンカードの取得にはお金と労力がかかり、所属ラボの協力が必要になってきます。ボスがそのサポートをできるかどうかを事前に確認しておいた方が良いです。

コロナ対策は?

緊急事態の時こそラボの本質が出ると思っています。大学内でもちゃんとルールに従っている所とマスク以外は普段と変わらないという所にわかれています。私はきちんと対策していない所に行くのは嫌だったので先に聞くつもりでした(ボスのほうからシフト制でも良いかと質問された)。

 

ラボメンバーにきくこと

基本的にはボスへの質問と同じです。信憑性を確認するためです。ラボメンバーとボスとの認識の相違も確認できます。できれば何人かに聞けると良いです。

ズバリこのラボはおすすめか

ラボメンバーが自信をもって薦められるのは良いラボである可能性が高いでしょう。そのラボに数年いるか、すでにそのラボを出ているメンバーに話を聞くことができればなおさら良いと思います。

余談ですが、日本のブラックラボにいた時、ラボに興味がある学生がきて同じ質問をされました。質問者がどういう人かもわからないですし、もしラボに来ることになった時にボスに「この人がこんな風に言っていた」なんて伝えられても嫌なので、正直に全て伝えることはできず「合う人には合うと思います」みたいに答えていました。結果オーライではあるのでそのラボにいたことに後悔はありませんが、職場環境を気にする人にはお薦めできません。職場環境を気にする人ならその回答で察することができると思いますが…ホワイトな所を探したいと思うなら、ラボメンバーの意見はかなり慎重に聞いた方が良いです。ちなみにアメリカではそんなことはおかまいなしに正直に喋ってくれることが多いです。

ラボメンバーの数と関係性

相性もあるので何とも言えませんが…ラボの雰囲気はメンバー次第でかなり変わります。全員が仲良しである必要はないと思っていますが、殺伐とした環境はストレスになります。

ボスの人柄は?

仕事には関係ないと思っていましたが、仕事以外で感じるストレスは知らず知らずのうちに生産性に影響を与えます。ラボメンバーが迷うことなく良い!というようなボスを選びたいです。

ボスとコミュニケーションはちゃんととれるか?

基本的にボスはかなり忙しいです。それでもちゃんとプロジェクトの話をする時間をとってくれるかどうかは重要です。人柄も影響してくると思います。

プロジェクトの進め方は?

完全放任主義、もしくは全て細かくコントロールしたがる、というように極端な場合があります。自分のスタイルに合うかどうかを確認します。(今のボスは全てコントロールしたがるので窮屈です。逆にその前はずっと放任主義の所にいましたが、まだ未熟な私には吸収できるものが少なくてもったいないと感じました。極端なのは嫌です。)

1日皆どのくらい働くのか

理想は短時間働いてちゃんと業績を出すことです。もちろん長く働いてもっと業績を出せば良いとも言えますが、私は家族との時間も大切です。大学の研究職は特に時間が決まっておらず基本的には自由ですが、ラボの雰囲気を知っておいた方が良いと思います。皆が長時間働く中で自分だけ毎日早く帰るっていうのは、気にする人にとっては精神的に辛いです。

休みはとりやすいか

プロジェクトの進行などにもよるのですが、自分が休みたい時にきちんと休めるのかどうかは確認しておいた方が良いです。特に帰国時にはまとまった休みが必要です。

産前産後のサポート

もし自分にその予定があるなら聞いた方が良いです。経験者に聞いてもボスに直接聞いても良いです。所属大学では産休として8週間の有給が認められていますが、それ以外にもサポートが必要な場合はボスの判断になります。ちなみに夫のボスはできた人なので、8週間休むことを前提にプロジェクトの話をしてくれて、私と夫は同じ期間産休を取得できました。(アメリカは日本ほど産休育休のサポートが整っていません。産休がない所すらあるので要注意です。ちなみに所属大学では育休を1年取得できますが完全無給です。)

 

その他

私は内部移動だったので福利厚生に関して聞く必要はありませんでしたが、アメリカだったら特に健康保険などはしっかりと聞いておいた方が良いです。あとは設備や周りの環境(治安)、大学がどのくらい研究者をケアしているか(セミナーや就職活動へのバックアップなど)を聞くと良いと思います。

 

今回の転職活動の流れ

  1. ボスにCV(履歴書)とCover Letter(自分の研究歴や興味のある研究などを述べる)を添付したメールを送る
    いくつか同時に送るのが普通です。ボスもそのことは理解しているはずです。今回は夫の都合もあって同じ大学で動く必要があり、選択肢がなかったので3つだけ…
    ※いきなりCVとCover Letterを送って問題ありませんが、その前にポジションがあるかどうかを聞くという人もいます。無駄な所には送りたくないかもしれませんが、個人的には聞くよりも先に送ってしまって良いと思っています。今回送ったうちの1箇所は、「今はポジションないけど興味があるから話したい」と言われてお喋りしました。よくあることみたいですが、そうやって人脈が広がるのも良いかと思います。
  2. ボスからポジションに空きがあり採用に興味があると連絡をもらう
    今回は運良くすべての人からメールの返事をいただけましたが、返信がないのはよくあることです。メールが埋もれていたり迷惑メールに入っていたり忘れられていたりするので、しばらく経ってからもう一度送ってみても良いと思います。秘書さんをCcできれば見てもられる確率が高くなるかもしれません。
  3. ボスとzoomミーティング
    論文をサラッと読んで研究内容を軽く把握していましたが、特に準備は必要ありませんでした。私は質問リストだけ事前に考えておきました。
    どんな研究に興味があるのかと将来どうしたいのか軽く質問され、ボスが研究内容をプレゼンしそれに興味があるかどうかの確認、私ができる実験スキルの確認をしました。ラボメンバーに話を聞いたかどうかも確認されました。あとはビザの状況、給料、希望の移動時期、コロナ対策など事務的なことを話しました。学内移動なので皆ボスのことを知っており、今のボスとの関係性や移動における懸念点なども話しました。
  4. グループミーティング(zoom)に参加し、他のラボメンバーに自分の研究をプレゼンする
    これまでの研究全てを紹介してほしいと言われていたのでパワーポイントを用意しました。時間の指定はありませんでしたが30分以内にまとめました。他のメンバーはいつも通り進捗状況を話し、ミーティングの雰囲気もわかりました。
    ※後ほどラボメンバーにボスのミーティング中の様子がいつもと同じかどうか確認しました。今のボスは訪問者がいるとナイスな人になるので…
  5. 質問し忘れたことなどを適宜メールで確認する
  6. どのラボに行きたいかを決めて連絡し、希望移動時期を伝える
    できるだけ早く移りたいと連絡しました。その後の流れなども含め、いろいろと指示してくれました。
  7. 事務に連絡をする
    私の場合は事務の人と頻繁に連絡をとっていたので、すぐに伝えて手続きが進みました。ボスも秘書に連絡して事務に繋いでくれました。所属部署は変わりますが、大学内なのでとてもスムーズでした。
  8. 現在のボスに移動することを伝える
    ラボを去る時に知らせるのは2週間前までというのが大学のルールですが、今後も関係性を保ちたいのであれば早めに伝えた方がお互いのために良いです。今回は同じ大学内でボス同士も知り合いなので少し気を遣いました。今のボスは悪い意味で有名ですが、新しいラボのボスはそれを含めて全て知っていますし、立場も上なので話は早かったです。私がボスに移動を伝えたことを連絡した後、直接ボスと話をしてくれました。
    以前から移動したいということはボスに伝えていたからか恐れていたことは起こらず、拍子抜けするぐらいスムーズに伝えられました。ボスも機嫌が良かったので助かりました。(ずっと前に一度転職活動をしたのですが、推薦状を頼んでも書くと言って何ヶ月も放置したり、引き留めるようなことをされていたので、その時のはボツになりました。なので今回はボスの推薦状が必要ない所を探しました。このような経緯からボスが私に移動して欲しくないことは知っていました。過去に移動したポスドクの新しい所属先に怒鳴り込みに行っちゃうようなボスなので、若いボスは嫌がりますよね…結果的にはボスとの関係性よりも私のことをケアしてくれる人を見つけられて良かったです!)
    ホリデー前に伝えたので良い年末年始を迎えることができました
  9. ラボを去る準備をする
    自分が作成したものと情報を整理してボスのチェックを受けます。いつ自主隔離になってもおかしくないので早めに済ませておきました。
  10. 事務手続きを待つのみ
    DS-2019(ビザ)の更新と正式な書類へのサインを済ませ、無事手続きが終了です。

 

転職活動結果

結局2つのラボからオファーをいただくことができ、熟考することができました。選ぶのにかなり悩みました。質問リストの回答とラボメンバーの意見はかなり貴重でした。

すべてのプロセスはクリスマス休暇を挟みましたが2ヶ月ほどで終わりました。論文をまとめてから半年後くらいに移動しようかなと思っていたのですが、新しいラボのボスにはすぐにでも来てくれたら嬉しいと言われたのでなるべく早く移ることにしました。論文のこととかいろいろ悩みましたが、いつになるかわからないのを待っているのも時間の無駄だなと思えましたし、やる気もあまり出ません…環境もストレスです。それよりは早く新しいラボに移って新しいプロジェクトを始めた方が生産性が良さそうだと思いました。

今回は時間的余裕もありましたし、どういうラボに行きたいというのがはっきりしていました。なので選んでもらうのではなく『自分が選ぶ』立場で転職活動ができたのが良かったと思います。来週から新しい職場ですが、この転職が自分にとって良かったのかどうかはこれからの自分の働き次第です。ホワイトな職場、楽しみだな〜

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